#5 プロの力
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#5 プロの力

2015年4月
融資を受けるための資料作り。どんな思いがあっても、それは まず数字で出していかなければ。
とはいえ、思いをきちんと伝えて相談できたら・・

税理士事務所を調べ始めると、事業について相談にのってくれ、税理士さんを紹介してくれるというウェブサイトを見つけた。
何でもネットで見つけられる時代だけれど、どこを信頼してよいものか、危うさも感じながら、それでも前に進んでみようと、ひとつの会社に連絡をとってみた。

「近くで税理士さんをお探しなんですね。調べてまた折り返しご連絡します。」と、親切な声で対応下さった後、驚くほど早く、その日のうちに電話がかかってきた。

「少し距離がありますが、お話を聞きます。とおっしゃる会計事務所さんがいらっしゃいました。どうされますか?」
話を聞いて頂けるのなら、まずは訪ねてみよう!と、ひとつ返事でご紹介頂くことにして、訪問の日時までを決めて頂いた。

訪問当日、一時間弱 車を走らせた長閑な住宅街に会計事務所はあり、玄関を入ると、背筋を伸ばしてデータ入力をしている数人の社員の方が、「いらっしゃいませ」と気持ちよく声をかけて下さった。

とても清潔にされている事務所の二階に通されると、所長さんが「こんにちは。 どうぞかけて」とにこやかに手を差し伸べて下さり、その柔和なお顔立ちに、緊張しきっていた私達はほっと暖かなものに包まれたように安心した。

「ネットの方から紹介されてきた人は、まぁこの間もいたんだけどね・・ グチャグチャなレシートをこんなにいっぱい持ってきて、申告に間に合わせてくれってさぁ、それで大変な思いをしてみんなでやったわけよ」
「そうなんですね・・」返事をしながら、あ、私達も そういったタイプに思われているのかもしれないのだな。と、また緊張をし始めると、「ま、あなたたちはそうじゃないと思うんだけどね。ハハハー」と察したように笑わせてくれた。

「それで、今日は何か新しいことの相談なんでしょ?」
「はい、今 新しく土地を購入して仕事の場として使っていきたいと考えていまして、融資を頂くためのお力をお借りできれば・・と・・なにぶん、経験のない初めてのことなものですから、この様なご相談にものって頂けるのでしょうか?」

「うちも今、立ち上げ時の経営支援の様なことも初めているからお話伺いましょう。あなたたち、服を作ってるんでしょ。僕はさ、おじさんだし男だから、うちの女の子が話しを聞いた方がわかるだろうから、ちょっと待ってて」

にこやかな所長さんと、優しい笑顔を浮かべる奥様とに、カンカンと音を立てていたような鼓動は、少しずつ正常なリズムに戻って、あぁ、よい所を紹介して頂けたな。と、二人 顔を見合わせ安堵した。

ほどなく女性税理士さんがいらして「はじめまして。〇〇と申します。お話聞かせて下さいね。」と。
新たな場を作っていきたいこと、仕事の資金として政策金融公庫で融資を受けたいこと、どの様なことをしていきたいか・・など、思いの丈を話しながら、まず、自分たちのことを知って頂くために 今まで掲載頂いた書籍や雑誌をご覧頂いた。

書籍をゆっくりご覧になりながら、「中山さんたちのこと、私知りたいので、この本をお借りしていいですか?」と、想像もしていなかった嬉しい言葉をかけて下さった。
「もちろんです。ありがとうございます。」

ボロボロの船で海を彷徨っているような気分の私達を、大きな船が岸辺に導いてくれるようで、助かった・・という気持ちになっていた。


#0 記録に際して