#9 上がったり下がったり

 

苦手な数字と向き合って、資料を作り上げた達成感と、会計事務所に託した安心感でホッと一息したいところ・・
しばし現実逃避したいような気持ちになっていた。

ただ 会計士さんから
「生産力が圧倒的に足りないようですね・・」
「もっと筋力をつけていきましょう・・」
と、診断頂いていたので、今までずっと抱えてきた生産力のなさを解決しなければ、きっと新しい場所を作っても返済もままならないかもしれない。
いつもどおり脳天気ではいられないのだ..。

縫製工場を訪ねたり、お針子さんの募集も始めて 皆さんとお会いしたり 電話で話したりと、相変わらず目まぐるしい日々の中、やっととれた休みに、静岡市を訪れた。
駅前は立派な街並みで、昔ながらのアーケードもあり、新しさと古さが混在したような繁華街は、東京の様なトンガリ族はいないので 程よい居心地の良さを感じられる。

洒落たショップの入る静かなビルで、休憩ソファに腰掛けていると、会計事務所からの電話が鳴った。
一呼吸してから電話に出ると、
女性会計士さんが
「公庫の方とお話ができまして、なんとかお借りできそうです・・」
「ひとまず お伝えしたくてご連絡しました」と。

トクトク鳴る心臓の音を聞きながら、二人で固く手を握りしめ泣き笑いの様な顔でウンウンと頷き合っていると
ほどなく すぐ、電話が鳴った。

「中山さん、今 また公庫から電話がありまして、全額までは難しいかもしれないということなんです。ごめんなさい。他の金融機関もお考え頂くなど、もう少しお話を煮詰めていく必要がありそうです。
場合によっては、まだ色々と提出して頂かなくてはなりませんので・・」

と、女性会計士さんも きっと私達と同じ様な思いでいるのか、ただこちらに感情移入しすぎないようにしているようで凜とした口調で伝えてきた。
それでも声の震えから、会計士さんの動揺も電話越しに伝わった。

こんなにも上がってすぐ真っ逆さまに落ちるような気分は 思い出しても少し動悸がしてくる(笑

他の金融機関? いったいどういうことだろう..?
電話を切った後、はっきりとした答えのでないまま、ずっとモヤがかかったままの中にいて久しぶりの休日は ため息の回数が多くなってしまった。

すぐに結果が出ると思っていた私達は、またここから しがない自営業の気分をしばらく味合わうことになった。

思えば、東京にいた頃から 「個人事業主として 海のものとも山のものともわからない人たち」の看板を常に背負ってきて、それでも 当たって砕けろな勢いで なんとか乗り切ってこれた。
今回も とにかく”アタック”してみようと始まったのだった。
考えた末の決断だったけれど、、やっぱり、そう簡単なはずはなかった・・。

融資申請金額が土地代+リフォーム代で、私達にとっては20年かかって返済するような金額と考えていた。それでも、東京や鎌倉の相場に比べると 土地面積で考えたら 難ありなのでかなり安価なはず。

公庫の方では、こちらの運営状況を照らし合わせて このくらいまでなら返済できるだろう・・と割り出した数字が私達の希望する満額には至らなかったようだった。

あぁ、自分たちは小っちゃいんだなぁ。

いいもの作りをしながらなんとか二人の暮らしが成り立てばいいよね。
たまに旅行に行けるくらいのゆとりがあればいいな〜と、自分の暮らしを自ら生み出している友人たちとよく言っていたけれど・・・
夢を持った時には、やはりお金が必要なのだ。

 


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