#10 夢は叶うのか?

 

「夢が叶った」と完結させない、簡単に叶わなくてもいいんだよ。と言いきかせる。
ハラハラした後に大喜びをし、瞬時にガッカリも味わう経験なんて、そうできるものじゃないけれど、あの電話の数分間は、まるで みぞおちを打たれるような出来事で、、かくも鮮烈な記憶として残ってしまった。

この備忘録を書いている今も、その頃の場面場面がスラスラと思い浮かんでくる。
昨日のお昼ご飯も忘れてしまうことはよくあるのに・・・(笑

会計事務所の方から、満額ではないけれど、融資をして頂けそうと連絡を頂いた後、受験でもした様に 毎日 さてどうなのだろう・・ と 合格・不合格を待つような気分でいた。
確定のお知らせは、なかなかやってこない。

申請を、代理でして頂いたので公庫の担当者の表情を見ることもできない。
全く雲をつかむような心持ちでいる中、いよいよ顔合わせ・現地への確認の時がやってきた。
面接を受ける心構えで、臨んだ顔合わせは、あっけなく 申請内容に間違いないか・・などの簡単なもので拍子抜けしてしまった。

数日後、公庫担当者の現地確認があり、「気持ちのいい所ですね!」と、個人的な感想を頂いた以外は この場所でどの様にどんなものを販売するのか などなどの細かなことは全く聞かれることがなかった。

こちらは、なにぶんポンコツ夫婦ゆえ、理路整然とした喋りは苦手中の苦手、面接につけ現地にお招きするのにつけ、リハーサルのごとく こう聞かれたら こう答えられるようにしよう・・など、気合い十分だったのだから 拍子抜けを通り越して あれ、なんだかつまらない とまで思ってしまった。

今思えば、それまでの間に、女性会計士さんが十二分に私達のことを伝えてくれていたのだと思う。
こんなにも親身になって頂く経験はこの先もそうないだろうし、今思い出しても少しこみ上げてくる。
感謝という言葉を何十個重ねたらいいだろうか..と思う。

「また、結果は会計事務所さんの方にお伝えしますので・・」
公庫担当の方は、最後 静かな笑顔で言うと爽やかに坂を上って行かれた。

目の奥は笑っていなかったじゃないか と、自ら心配の種を見つけて落ち込んだりしたあとは、「さ、人事を尽くして天命を待つだね!」と、よくあるフレーズに助けられ、気分を切り替えた。

これで、本当にどの様な結果となるのか待つのみ。

希望金額を満額はお借りできそうにないけれど、ひとまず土地の購入と少しのリフォーム代は出そうな融資額。

この金額をどう考えていこうか..

女性会計士さんに伺っていた 融資を受けた際の月々の返済額をみると、専門家が判断してくれたとおり、なんとかやっていけそうな金額でコツコツ頑張ろうという気持ちにさせられる。

足りない分は、他の金融機関で・・と考えて頂いたが、希望の融資額まで借りてしまうと、今の自分たちでは数字を追いかけることになりそうだと…
それがどういう意味を持つのかも 言葉にせずともお互いにわかっていた。

「ビジネス」とは、きっとそうして数字を追いかけながら、成り立たせるもの。
ただ、この真鶴という場所で自分たちの生業を持って生きていくことは、「数字ありきのビジネス」と同じ様に考えていいものかどうか・・

まず、この場でどうしていきたいのか。
大切にしていきたいことはなんだろう..と いつもどおり二人で考えれば 答えは見えかけていた。

そして、女性会計士さんに、
「もし政策金融公庫で融資を頂けたら この予算でひとまずできることから始めていこうと思います」
と、お伝えした。

 


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